1/21 after six[13] 更新!!
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 眠気覚ましに、鞄からガムを取り出して噛んだ。スースー。口の中が少し痛くなる。家に帰ったら二十二時半ごろにはなるか。ここの駅から二駅で着くほど、大学から私の住んでいる所は近い。飲み会のあとに、たまに友達を泊めたりしている。帰って何か食べようかと考えていた。それからテストの持込用プリントを作ったとすると、寝るのは早くても、夜中の……二時にはなるか。もちろんお風呂に入ってから寝るよ。それから起きるのが朝七時だから、まぁまぁかな。全く、二部の時間帯の授業なんて、スケジュールに組むもんじゃないなって思った。

「おまたせ」
 斜め後ろから声がしたから振り返った。立ち上がって受け取る。

「これ、コピーしたやつ」
「あ、ありがとう」

 コピーされた用紙に軽く目を通してみる。字がきれいだった。教科書の明朝体に似ている。男なのに字が丁寧だということに対し、なんだかズルイ感じがするのは、私の字が下手だからだろうか。このコピーを見ながら、自分用に書き直す作業を想像して、ため息が出そうになったけど、こらえた。彼はスリッパを穿いていた。

「借りたハンカチ、明日返すのでいいかな?」
「あぁ、うん。いまでもいいよ?」
「少し、汚れたから」
 彼は眉根をひそめて呟く。なんだか申し訳なさそうな顔をしている。

「そんなに気にしなくていいよ。アリガト。じゃ、倫理のテスト終わった後は?」
「分かった。教室入り口で」
 頷いた彼は、じゃあ、と言って手を挙げ去ろうとした。私が鞄を肩に掛けた所で、彼が振り返った。
「高木」

 ああ、名前知らなかった。相手から名前を言われたので、どことなく安心感を覚えた。
「高木ユーイチっていうから」 そう言って、足早に去っていった。

 ちなみに私、浪川絵美っていうんだけど、それには興味、ないわけですか。そうですか。
 高木はジーンズのポケットに手を突っ込んでエレベータを待っていた。

 ……後ろ頭がムカツクから殴られてロッカーに突っ込まれた? 大学生のすることじゃないしアホくさい。でも自らロッカーに入るほどアホではないだろうと思った。或いは、……そうしなければいけない状況になったから?
 って、私は何を考えている? 首を軽くゆさぶってみた。
 変な人だけど。名前は普通だなって思った。

 目が蟻地獄。トランクスだけ。はだし。痣だらけ。「み、身軽でいいと思うよ」
 ひとまとめにして『変態』。それが高木のファーストインプレッションだった。
 

* * * * * * * *  * * * *


 前期試験の最初が、たいしておもしろくもなんともない倫理学。なんだかね。
 でもおかげさまで、回答はとても楽だった。ある程度勉強もしていたおかげで、三十分で全て終わったけど、一応終了の時間までは席にいた。

 見直しをした後、退屈になったから窓のほうを見た。もちろん目だけを動かして。カーテンがふわふわ揺れていた。試験監督をしている三人の教員達は、着ている事が使命とでも言うように、スーツの上着を羽織っていた。見てるこっちが暑くなる。脱げばいいのに。

 ふと、高校の試験中にあった出来事を思い出した。苦手な数学の試験だった。計算をしている時に、突然教師が話しかけてきたのだ。お前、学校祭一日目は出席してたか? って。その時の自分の顔は思い出せないけれど、すごい睨みを食らわせていたと思う。ありえないよねぇ。気が散るじゃないの。

 終了のベルが鳴るまで、あとは寝ていた。開始から四十分すると、退室が自由になるので学生が席を立ち始めた。五分前になると、教員達が再確認を促したので、目を開いて名前と学生番号をチェックした。ベルが鳴る前にさっさと教室を出た。

 その時、同じ列のかなり後方に、高木を見つけた。彼は机に突っ伏して寝ていた。左目の痣はまだ、残っていた。一日でひくものではないけれど。

 やかましくベルが鳴り響いた。一年生の頃は、しょっちゅうビクリとしていた。通路の長いベンチに座っていると高木が出てきた。少し眠たそうだった。私に気付くと目を少し見開いて口角を上げた。どこかプログラミングされたような動作だった。
 こう、改めて見ると、意外と背が高くてしっかししている……なんて思うのは私がいま座っているからだと気付く。

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【2008/05/25 23:14】 | 小説『after six』
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