1/21 after six[13] 更新!!
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 何枚か見ていて気付いたのだけど、星の写真よりもメンバーの写真のほうが多い。恐らくここにはまだ部長のデジカメで撮影したものしか無いのだろう。天の川を含めた星の写真は、きっと教授が望遠鏡を使って撮ったもののなかにあるだろう。今日出遅れた分、教授に頼んで一番乗りで見せてもらおう。

 私は散らかったスライドを集めて、近くのケースに閉まっておいた。そろそろ本当に帰らないと迷惑がかかる。
 そう思って立ち上がった時だった。
 ”ガスンッ”って。そんな音がした。
 初めはアルミ部分が軋んだ音かな、って思ったんだけど、何かが違う。あの引きずるような、金属が走るような。そう。レールみたいな。車のドアを思い切り閉めるような。

 私はハッとして窓際に駆け寄り、真っ黒な重いカーテンを勢い良く開けた。窓から顔を出し、辺りを見回す。生ぬるい風が、髪をすくう。そこで目に入ってきた光景に思わず落胆した。
 やっちゃった。文化棟の門、しまってら。
 ということは、ヘタに動き回ると、もしかしてセコムとかなんちゃらってやつが作動しちゃうのか? でもおかしいぞ。それだったらチェックリストに不備があった場合は終了できないはずだ。現に今までこの部屋の照明がついていたわけだから、警備員が見回りに来てもおかしくないはず。

 これは困った。自業自得という言葉は確かに浮上してきたけれど、即刻沈めた。
 試しにドアノブに手を掛けて、下げてみる。そのままゆっくり手前に引く。わずかな隙間が開いて5秒待つ。何も音が鳴らないので、ドアを開けて顔だけ出してみた。暗い廊下と非常口の明かりが見えるだけ。あの緑の明りは不気味だってのに、そこに描かれているピクトさんがかわいいっていうのが気に食わない。
 なんとなく松明なしでは歩く気がしなかったので、ドアを閉めて鍵まで掛けた。仕方がないので大学の本部に電話してみることにした。怒られるかもしれないし、誰も居ないかもしれないけど、何もしないよりはましだ。

 携帯電話を取り出した時に、ふっと、思い出した。自分は何をしに部室に来たのか忘れていた。危ない、危ない。このまま帰ったら来た意味がない。

 プリント、プリント、と頭の中で唱えて、自分が使わせてもらっているロッカーを開けた。

 そうしたら。

 パンツ(トランクス)一丁のそいつが、折りたたみイスみたいにたたまって、器用に、さもあたりまえのようにそこに居たのだ。
 
私の身体は一瞬で弛緩して、手から携帯電話が落ちていった。

 去年、機種変更をして以来、ずっと無傷を保ってきたのに、その日初めて傷がついた。カシャンと音を立てて、倒れこむ携帯電話。

 めまいがしそうなほどの脱力感に見舞われて、声を上げることも忘れていた。

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【2008/05/07 00:03】 | 小説『after six』
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