1/21 after six[13] 更新!!
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 面白がるように、ニヤっとしながら高木が言った。
 突然ガサっと音がしたので驚いて振り返ると、さっきのおじさんが草花を抱えて通過したところだった。鼻息を漏らして再度テーブルと向き直ると、高木が頬を片方膨らましていた。驚いていたらしい。そのことに驚いた。

「宝箱? なにそれ」
「冗談。大事なものだけど、無きゃ無いで、管理会社に連絡するよ。鍵をなくして怒られちゃうかもしれないけど」
「そうだね。まったく、服なんか脱いで遊んでるからそーなるのよ」
「え?」

 少し遠くを見ていた高木の目が音を立てたように収束した。フォーカスを合わせる様に。少なからず驚愕が含まれたものだった。
「え? だって服脱いで遊んでたから……じゃないの? その」
自分の下まぶたに人差し指を当てて言う。
「痣とか」
「え……」

 目の色がだんだん変わっていく。そのうち目に虹でもかかりそうだ。

「だって、服脱いで窓からポイするくらいの、やりすぎな、その、なんていうの? プレイ? いや、違うチガウ」

 やば! 何を言ってるんだ私は。顔がだんだん熱くなってきた。今が冬だったら冷風が熱を持って行ってくれるのに。

 高木は唖然としているが、口元に力が入っている。私は呼吸を、ひそかに整える。やばい。どっちが変態かわからない。

「そーいうことじゃないの? 人に言えないこともあるじゃない、そういうのって」

 おいー! 人に言えないような内容をほじくりかえしてどうするのよ自分ー! あー、高木くん、俯いちゃってる。
 呆れられちゃったカナ。額に手を当てている。

 「しかも男に脱がされてって、そりゃーねー、ね?」
 ね? じゃないよ! しゃべるな自分! 
 止まれ言葉の水道管。もう完全に変な女だと思われてるよ。

「うん。だまってるよ。鍵、見つかるといいね」

 うわぁ。どうしよう。私、一人で喋って一人で解決してる。見ると高木は額に手を当てたまま肩を震わせている。泣いたのか? と一瞬思う。
 私が恐る恐る、彼の顔を覗き込もうとすると、高木はもう片方の手で、テーブルを叩き始めた。

 もうやめてくれよ? それとも。いい加減にしろよ? どんな言葉が飛んでくるのかわからなくて目を細めていたが、聞えてきたのは笑い声だった。

 堪えきれない、という風に両目をきっちり結んで閉じ、口を開き(そんなに開いたんだ)お腹を抱えテーブルを叩くその姿は全くの予想外で、今度は私が唖然とした。さらに、見てはいけないものを見てしまったような錯覚までしてしまった。しばらくそんな笑いが続き、納まったと思ったら肩を震わせて「くくく」っと笑っている。しばらくは、走り終えた短距離ランナーのような呼吸をしていたけど、整えながら私を見た高木は涙目だった。中指で目を触り、「あー」と言った。込み上げる笑いを飲み込んで彼が喋る。

「浪川さん、僕は男とは、サッカーとか野球とかプレステとかでしかプレイしない」
 顔から火が出そうになった。消火器があったら自分に吹きかけたいけれど、本当に手元に有ったら、高木に投げつけてやりたいと思った。

「あなたが深刻そうに話すから勘違いしたんでしょお!! なによもう!」
口からツバが飛んだ。硫酸だったら良かったのに。高木にかかればよかったのに。

「ごめん。でも、そうだよね。勘違い、しかねない状況だ…よね」
 笑いを必死に隠して、こぼしている高木。
 純粋 花の香りの21歳 こいつのせいで 赤っ恥

 完全に不機嫌になった私は、足を組んで頬杖をつき、目をそらした。彼は悟ったのか、手で自分の胸をバシバシ叩き、細く息を吐いた。

「ゴメン。でも内緒にしてほしいのはホントだから」
 そう言って立ち上がる。話はもう終わったということか。まだ怒っている私を見て、彼は唇を噛んだ。見上げると目があって、バカバカしくなったので私は笑った。渇いた砂みたいに、小さく笑った。

「目撃者として、聞いてもいーカナ」
「昨日のこと?」
 私は頷く。

「その痣はどうしたの? プレイじゃなきゃ、なぁに?」
 冗談と皮肉を交えて、イタズラ小僧気分で問いかけた。しばらく彼はテーブルの木目を見た。何かが書かれているのかもしれない、と思った。顔を上げる。

「自転車に轢かれて、全身強打だ。じゃ、また」
 そう言って、私が口を開くより先に立ち去っていった。もうちょっとマシな嘘をつきなさいよ。

 また。だと?
 また、携帯が鳴った。
 
 チトセだ。



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【2008/06/16 23:54】 | 小説『after six』
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